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今月の一口コラムのバックナンバー
このホームページのトップページにある、月ごとに更新している院長の「今月の一口コラム」のバックナンバーをご紹介します。
毎月ためになる話しや、患者さんの疑問に答えています。ひょっとしたらあなたの気になっていたことや発見があるかも?見逃した方も安心してください!

・平成17年 7月号 便の潜血検査
・平成17年 8月号 過敏性腸症候群
・平成17年 9月号 大腸のポリープ
・平成17年 10月号 便秘と下剤
・平成17年 11月号 胃癌検診
・平成17年 12月号 胆嚢のポリープ
・平成18年 1月号 下血と虚血性腸炎
・平成18年 2月号 細い胃カメラ
・平成18年 3月号 逆流性食道炎
・平成18年 4月号 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
・平成18年 5月号 肝嚢胞・腎嚢胞・膵嚢胞について
・平成18年 6月号 胃カメラと胃の検診について
・平成18年 7月号 胃ポリープ:健康保険の適応はありませんが。
・平成18年 8月号 潰瘍性大腸炎について:若い人の血便は要注意。
・平成18年 9月号 脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)について。
・平成18年 10月号 ピロリ菌の除菌療法について。
・平成18年 11月号 Helicobacter pylori(ピロリ菌)に対する2次除菌療法が2007年8月から保険適用になりました。
・平成23年 4月号 【健康診断で胆石があると言われたら】

●平成17年 7月号 Q. 健康診断で便の潜血検査を2日行い、1日だけ陽性でした。もう一度便の検査をして陰性なら安心ですか?
A. 便の潜血検査は早い時期に大腸癌、ポリープなどを発見するためにとても重要な検査です。大腸癌が毎日出血するとは限りませんし、大腸癌をもっている人の90%以上で、2日のうちどちらかの日の潜血検査が陽性になるというデータもあります。もし、3回以上検査しても、1度でも陽性であったら、積極的に大腸検査(注腸、大腸内視鏡)を受けられることが大事です。
●平成17年 8月号 過敏性腸症候群について
うだるような暑さが続き、冷たい飲み物がおいしい季節です。でも、この時期、過敏性腸症候群の人は水の飲み過ぎで下痢がひどくなる事が多く苦しみます。過敏性腸症候群の原因ははっきりしていませんが、ストレス、過労などが引き金となって発症したり、症状がひどくなる事があり、腸を動かす自律神経の異常が関係しているようです。診断は注腸、大腸ファイバーなどを行っても異常が無いため、症状から類推します。最近は、中学生や高校生の患者が多くなってきた印象があり、特に、便通の異常(腹痛、下痢、便秘を繰り返すなど)を恥ずかしいと感じてしまう若い女性が増えているようです。治療は上手に整腸剤や軽い下痢止めを使い、症状を出にくくすると少しずつ良くなってきます。漢方薬を補助的に使う場合も多くあります。いずれにしても、命に関わる病気ではありませんが、本人にとってはとても苦しい病気ですので、思い当たる方は、一度ご相談いただければと思います。
●平成17年 9月号 Q. 大腸のポリープを内視鏡でとってもらいましたが、組織検査でグループ3の前癌病変といわれました。癌という言葉を聞くと怖くなりますが、グループ3とはどういう意味なのですか?
A. 組織検査の悪性度の指標としてグループ分類が行われます(以前はグレード分類と言いました)。グループ1が非腫瘍性変化で、正常なものや、炎症性のものが含まれます。グループ5は癌で最も悪性度が高い診断となります。それではグループ3とはどのあたりに位置するのでしょう?たとえば、通常内視鏡で切除する良性の大腸ポリープはほとんどが、組織的に腺腫でありグループ3と診断されます。一般的に、グループ3は前癌病変といわれますが、全てがほっておくと将来、癌に変わる訳ではありません。時に、癌化する場合がありますが、わずかな期間、つまり1ヶ月とか、1年とかで確実に癌になる訳ではありませんし、ほっておいても一生グループ3のままの場合もあります。グループ3の病変は様々なものを含んでいます。結論から言うと、グループ3は癌ではありませんし、通常の大腸ポリープはほとんどがグループ3である事から考え、あまり神経質になる必要はありませんが、癌化の可能性を考慮すればやはり、見つかった場合、早めにとった方が良いでしょう。ちなみに、胃のポリープは過形成性ポリープであり、グループ1の診断が多く出されます。
●平成17年 10月号 便秘と下剤
季節も秋となり、水分をとる量が少なくなるに従いひどくなりがちな便秘について書いてみます。便秘で悩んでいる方はやはり圧倒的に女性に多いようです。便秘になるとおなかが張って痛いだけでなく、固い便のためお尻の穴が切れて痛くなったり、出血してびっくりしたり、ろくな事がありません。やはり、便は早めに出しておいた方が良いに決まっていますが、なかなか“便秘ごとき”で、病院にかかるのは勇気がいるようで、近くの薬局で下剤を買って飲んでいる方も多いようです。ここで気をつけていただきたいのが、刺激性の下剤、つまり便を作る大腸自体を刺激して動かす事により便を出すタイプの下剤を長期に飲んでいる方は、大腸が刺激に鈍感となり、だんだん薬が効かなくなってくる場合が多い事です。このタイプの下剤は、最初は良く効くので重宝しますが、女性に多い習慣性の便秘には不向きだと私は考えています。適切に緩下剤を使用すれば直らない便秘はほとんどありません。緩下剤は副作用も殆ど無く安全な薬ですし、長期に服用しても量が増えていく事はほとんどありません。一度お気軽にご相談ください。
●平成17年 11月号 Q. 胃癌検診を受けたところ、要精検との返事がきました。胃癌になってしまったのかと考えると夜も眠れません。
A. 胃癌検診は、通常バリウムを飲むX線透視検査を行います。間接撮影(小さなフィルムを用いる)で行う事が多く、診断精度は胃カメラに比べるとかなり劣るので、要精検イコール胃癌ではありません。また、胃癌を疑って要精検となるばかりではなく、胃ポリープや十二指腸球部変形(十二指腸潰瘍をを疑います)など、良性疾患も含んでチェックされる事が多いようです。それでは、要精検との報告がきても無視しても良いかというと、そういう訳ではありません。要精検でない人に胃カメラを行うより、やはり高率に胃癌が見つかる事が多いのです。最近、胃カメラも以前より楽に飲めるようになってきました。2次検査の胃カメラをやらないなら、1次検査をせっかく受けた甲斐が無くなってしまうと考えてみてください。
●平成17年 12月号 Q. 検診で腹部エコーを行ったところ、胆嚢に数mmのポリープがたくさんできていると言われました。そんなものがたくさん出来るようでは心配なので、手術をして取ってしまおうかと思いますがどうでしょうか?
A. ポリープの代表選手としては大腸ポリープが最も良く知られています。大腸ポリープの多くは良性ですが癌化の可能性があるため、見つかった場合原則として内視鏡で切除する事が一般的です。一方、胆嚢ポリープは10mm以下の場合、良性のコレステロールポリープである事が多く、その場合、ポリープが多発している事が多いのです。逆に考えると、多発で10mm以下のポリープは良性である事がほとんどであるため経過観察を行う事が多いようです。10mm以下のポリープでも胆嚢癌である可能性はゼロではないので、厳密に言うと超音波内視鏡(EUS)という精密検査を行うことが勧められますが、大学病院や国公立の大病院にしか検査装置がありませんし、胃カメラを飲む程度の苦痛は覚悟しなくてはいけません。まず専門医に相談し、発見された当初は2−3ヶ月後の早めにエコーの再検査を行う事が良いでしょう。
●平成18年 1月号 下血と虚血性腸炎
先日、下血(肛門からの出血)の患者さんが来院されました。前日の夜に腹痛と下血があったとの事で、本人は直腸癌になってしまったのではないかと心配そうです。まず、指を肛門から挿入し直腸診を行うとやはり指に血がついてきます。至急の血液検査で貧血は認めませんでしたが、緊急で大腸ファイバーを行う事にしました。通常の大腸ファイバーは前日から食事制限や下剤の服用に加え、検査当日にも腸の洗浄液を2リットルほど飲む必要がありますが、緊急の場合は便が残っているのは覚悟し、浣腸を行うだけでカメラを行います。S状結腸から下行結腸にかけて、大腸の走行に沿って多数の浅い潰瘍を認め、虚血性腸炎の診断がつきました。この病気は短期間で跡形もなく直る場合がほとんどである事を説明し、点滴をしてその日は腸の安静のため絶食してもらうよう指示し帰宅してもらいましたが、翌日には下血もとまり、とても元気な様子になりました。虚血性腸炎の多くは便秘による腸管の拡張により、大腸を栄養する細い血管が押さえつけられ一時的に血がかよわなくなるために起こるとされています。腹痛の後に下痢が始まり、その後血性の下痢からひどい場合には血液ばかりが出るようになります。一般に診断がつけば特別な治療無しに直る予後の良い病気です。なじみの薄い病名だと思いますが消化器内科医を長年やっていますと、ちょくちょく経験する病気です。緊急の大腸ファイバーはやる方もやられる方も大変ですが、診断価値の高い検査です。
●平成18年 2月号 Q. 最近、鼻から入れる細い胃カメラが開発され、それを使うと胃の検査が楽に受けられると聞きましたが、先生のクリニックに置いてありますか、また、実際はどうなのでしょうか?
A. 残念ながら当クリニックには鼻から挿入出来る細径ファイバーは置いてありません。性能については、あくまで私見ですが、現時点での画質はクリニックで通常使用している胃カメラに比較するとかなり落ちるようです。しかし、通常の観察は十分可能であり、生検などの処置も可能です。胃カメラを飲み込む時の辛さが大きく軽減される事は間違いなく、それは大きな魅力ですが、長年、消化器内視鏡医をやってきた者としては、10年以上かけ徐々にアップしてきた画質・操作性が少しでも劣化する事に耐えられず、現在は購入しておりません。胃カメラといっても電子スコープであり、近年の電子機器の進歩がすさまじく早い事は承知していますので、将来もう少し改良されたら飛びつくかもしれません。付け加えますが、現在当クリニックで使用中の胃カメラはハイビジョン対応であり、そのおかげで以前より一回り細いカメラとなったものです。開院以来6ヶ月で、約300件以上の胃カメラを行いましたが、嘔吐反射が強烈な方は100人に数人というところで、以前から言われているほど胃カメラも辛くはなくなってきていると思いますが、いかがでしょうか?(今月のコラムはあくまで私見です、現在経鼻の細径ファイバーを使用中の先生からはお叱りをうけるかもしれません。)
●平成18年 3月号 Q. 最近、胸やけやみぞおちの痛みを感じる事が多くなったため、胃潰瘍かも?と思い、胃カメラを飲んだところ、逆流性食道炎と言われました。聞き慣れない病名ですがいったいどんな病気なのですか?
A. 逆流性食道炎は胃酸が食道に逆流する事により、胃酸に弱い食道の粘膜がただれてしまう病気です。従来、日本人には少ないと言われていましたが、高齢化や食 事の欧米化に伴い急速に増えてきており、消化器科の診療を行っているとしばしば経験するありふれた病気になってきました。それでは胃酸の逆流が誰にでも起 こるかと言うとそうではありません。ほとんどは、食道と胃の間のしまりが悪くなる食道裂孔ヘルニアという状態になっている人におこります。胃と食道の間 は、基本的に物が通るときだけ開くようになっていますが、食道裂孔ヘルニアになると程度の差はありますが、いつも開いている状態になります。立ったり、 座ったりしている時は重力の関係で胃酸が食道に上ってくる事は稀ですが、横になった場合(多くは寝ている時ですが)に逆流が起きています。逆流性食道炎の 主な症状は胸やけですが、食道のしみる感じや胸痛、胃部不快感に加え、咳や喉の違和感などを訴える場合もあります。診断は胃カメラを行う必要があり、胃透 視では正確な診断ができません。治療は主に、胃酸を強力に抑える制酸剤が有効ですが、軽症の場合は生活態度の改善でも良くなる場合があります。刺激の強い 食べ物を控えたり、腹圧が上がる肥満の解消、夜遅くの食事を慎むなど出来ることからやっていきましょう。正確な診断を行う事が適切な治療に繋がる病気で す。やはりスタートは胃カメラからと言う事になりますね。
●平成18年 4月号 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
クリニックを開院して約8ヶ月が過ぎ、通勤の往復に満開の桜を楽しんでいます。季節も春となり、新年度が始まるせいか、胃の調子を悪くして来院する方が増えてきました。専門が消化器科であり、毎日せっせと数件ずつ胃カメラを行っておりますので、当クリニックの胃カメラ総数も450件にとどこうとしておりますが、最近、胃カメラをやっても、なかなか胃潰瘍・十二指腸潰瘍に出会わなくなってきました。ご承知のとおり胃潰瘍・十二指腸潰瘍の殆どはピロリ菌が原因であり、ピロリ菌の除菌療法が一般的な治療となって数年が経過したため、世の中の胃潰瘍・十二指腸潰瘍患者が駆逐されようとしているのかもしれません(今のところ、言い過ぎです)。中高年のピロリ菌保有率が80%以上あるのに対し、若い人たちの保有率ははるかに低率であるため、もともと潰瘍にならない人の割合が増えている事も一因でしょう。ともあれ、近い将来、胃カメラは胃癌の早期発見と逆流性食道炎の診断が主な目的となる事は間違いなさそうです。
●平成18年 5月号 肝嚢胞・腎嚢胞・膵嚢胞について
今年の5月は雨が多いと思っていましたが、例年に比べ60%程度の日照時間しかなかったとニュースで聞き、やはりと納得しました。さて、今月は嚢胞について書きます。当院、岡山内科消化器科クリニックで腹部エコーの検査をしていますと、しばしば見つかる疾患です。みなさんも、人間ドックなどを受けた際、肝臓や腎臓に水のたまった袋のような物が出来ており、「嚢胞と言います」といわれた事があるかもしれません。あまり、聞き慣れない疾患名ですので、水泡とか膿瘍とか言われたと、聞き間違えて来院する患者さんも多く見えます。エコーでは、液体の部分は黒くはっきり映りますので、嚢胞は技術、装置の優劣にかかわらず、最も描出し易い疾患です。しかし、それに病的意義があるかと言うと、ほとんど問題になりません。肝臓の嚢胞でごくごく一部に嚢胞腺癌という癌が発生する事がありますが、本当に極めてまれな場合です。したがって、肝嚢胞・腎嚢胞は殆どがほっておいても良いと言うことになりますのでご安心下さい。ただ、同じ嚢胞でも、膵臓にある膵嚢胞の場合は腫瘍性のものが稀ではありませんので、厳密なフォローアップか、場合により精密検査が必要になりますので注意してください。
●平成18年 6月号 胃カメラと胃の検診について
新年度に入って 2ヶ 月が過ぎ、職場などで検診・人間ドックなどを受ける機会が増えてきていると思います。最近時々相談を受ける内容につき書いてみる事にします。医療機関に胃 潰瘍や逆流性食道炎、胃炎、胃ポリープなどで通院し、毎年、胃カメラを行っている方や、たまたま胃の具合が悪かったため胃カメラの検査を数ヶ月以内に受け た方などが、胃のレントゲン検査を含む検診を受ける場合、どうすればよいのでしょう。結論から言いますと、胃カメラの診断精度は検診で行う胃のレントゲン 検査よりはるかに高いため、あまり時期が近い場合、胃検診だけは省いてもらって良いと思います。「 1 ヶ 月前に胃カメラをやったが、会社から胃検診を受けるように言われ、断るのも面倒だし、ただでやってもらえるので受けました。」と言われる方がみえますが、 胃潰瘍やポリープなど明らかな異常が元々あれば、要精検となるのは当たり前ですし、もし、レントゲンで見つからないような小さな病変や軽い異常で、要精検 とならなくても写っていないだけですから喜んでいいのかどうか判断に困ります。さらに要精検となった場合の精密検査は胃カメラである事を考えれば、常識的 には、あまり近い時期の場合、レントゲン被曝のデメリットも考慮し、辞退された方がよいのではないでしょうか。とはいっても、どのぐらい時期があいていれ ばやるべきかは難しい問題ですね。
●平成18年 7月号 胃ポリープ:健康保険の適応はありませんが。
先月は「今月の一言」をお休みしてしまいました。極く少数の当コラムの読者の方々にはお詫びいたします。さて、胃の中に住むピロリ菌が胃癌に関係するのではないかと言われるようになり、どうも実際関係がありそうな証拠がでてきていているようです。ピロリ菌の除菌療法は、ある種の抗生物質と強力な制酸剤を1週 間服用するだけの簡単な治療ですが、現在のところ胃潰瘍・十二指腸潰瘍をもっている方のみが保険適用であり、胃癌予防では保険を使った治療はできません。 この辺の事情は結構周知されてきており、適応外での治療を希望される方はほとんど来院されません。さて、今回のお話は胃癌ではなく胃ポリープです。胃ポリープは組織学的に過形成性ポリープと腺腫性ポリープがあり、腺腫性ポリープは癌化の可能性が高いのですが、幸いな事に発見されるほとんどの胃ポリープは 過形成性ポリープで、癌化率は極めて低く経過観察される事がほとんどです。この過形成性ポリープは胃カメラをやっているとちょくちょく見つかる病変で、た くさんある方も多いのでなぜこんなにできるのかとよく聞かれますが、はっきりとした原因はわかりません。最近、胃ポリープの発生にもピロリ菌が関係してお り、除菌を行うとポリープが消失する事例もあるようです。こちらも、保険適応はなく、私自身も胃ポリープの除菌治療は経験がないのでそれ以上のことはわかりませんが、胃ポリープは頻度の高い疾患ですので、今後の研究成果が期待されます。
●平成18年 8月号 潰瘍性大腸炎について:若い人の血便は要注意。
消化器科を標榜していますと、血便を訴えて来院する患者さんが多くみえます。血便の程度は、便器が真っ赤になるほど多かったり、紙につく程度であったり様 々ですが、殆どの方が大腸癌を心配して来院されますので、すぐに癌の有無を診断するため、注腸というバリウムを使った大腸のX線造影検査か、大腸内視鏡を行います。高齢な方の場合はそれでいいのですが、稀にみえる10代、20代の若い人で血便や血性の下痢を訴える患者さんの場合、すぐに大腸の検査を行うかどうか迷う場合があります。実際、その年齢で大腸癌ができる事は極めて稀なのです(全く無いわけではありませんので、念のため)。若い人に多くみられる稀 な疾患で潰瘍性大腸炎という病気があります。大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍が多発する病気で、血便や粘血便、下痢を来します。病変は肛門に近い直腸から始まり、重症になると連続性に大腸の奥に向かって広がっていきます。原因がはっきりせず、いったん良くなっても再発を繰り返す事があるため、特定疾患(難病)に指定されている難しい病気です。この病気の診断には、先に述べた注腸造影検査、大腸内視鏡検査が非常に有効であるため、私のクリニックでは若い人もなるべく積極的に検査を行うようにしています。
●平成18年 9月号 脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)について。
脂肪肝という病名がとてもポピュラーなものになってきました。最近は検診受診者の7%程度が脂肪肝と診断されるそうですから、身近に脂肪肝と言われた人はうじゃうじゃいるわけです。以前は、脂肪肝と言えば太りすぎによって起こる肝臓への脂肪の溜まりすぎで、ひどくなっても肝硬変や肝臓癌など恐い病気には進 まないと信じられてきました。最近、脂肪肝の1割程度に肝への脂肪沈着に加え壊死炎症反応を伴う非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と言う病気が含まれている事がわかってきました。NASH(ナッシュ)なんて病気はほとんど聞いたことがないと思いますが、最近話題になっている新しい病気の概念です。こちらは脂肪肝と違い、10年で2割程度が肝硬変になってしまい、肝癌を発症することのある恐い病気です。血液検査では軽度の肝障害(GOT>GPTが多い)を認めますが特徴的ではなく、肝生検という針で肝臓の組織を採ってくる検査を行わないと普通の脂肪肝との鑑別はできないそうです。最近話題になっているメタボリック症候群との関わりが深いと言われており、肥満、糖尿病、高脂血症、高血圧のうちいくつかを合併してもっている方は要注意です。いずれにしても、以前は恐い肝疾患として頻度の高いB型・C型慢性肝炎を注意していればよかったのですが、今後は脂肪肝にも注目して診断していく必要がありそうです。
●平成18年 10月号 内視鏡検査の結果、胃潰瘍と診断されピロリ菌の除菌療法を行いましたが、除菌がうまくいかずピロリ菌が消えませんでした。とりあえず胃潰瘍の治療薬を継続して服用するよう勧められました。今後、ずっと薬を飲み続けなくては行けないのでしょうか?
日本では6年前に、Helicobacter pylori(ピロリ菌)に対する除菌療法が胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対して保険適用となりました。除菌に用いる薬はプロトンポンプ阻害剤(制酸剤)+クラリスロマイシン(抗生剤)+アモキシシリン(抗生剤)の組み合わせで7日間服用します。当初は90%前後の成功率とされ、除菌失敗例は少数でしたが、最近成功率がどんどん低下してきている事が報告されています。除菌に失敗した場合は同じ組み合わせでもう一度治療が行えますが、残念ながら成功率はあまり高くありません。除菌失敗例の多くはクラリスロマイシンが効かなくなった菌(耐性菌)の存在が原因の1つで、それが同じ薬による2回目の除菌率が低い理由とされています。ピロリ菌が除菌されていない方では胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発が1年以内に70%程度あることが知られており、しかたなく再発予防に抗潰瘍薬を続けて服用する事になります。欧米ではメトロニダゾール(抗トリコモナス薬)という薬をクラリスロマイシンの代わりに用いる2次除菌法が行われており90%以上の優れた除菌成功率が報告されていますが、日本では保険適応になっておらず、現時点でどうしても希望される方は自費治療を行うしかありません。しかし、日本でもメトロニダゾールを除菌のため保険で使えるようにする手続きが進んでおり、ご質問の方も近い将来もう一度除菌のチャンスが巡ってくることになりそうです(まだ、うわさの段階ですが)。
●平成18年 11月号 Helicobacter pylori(ピロリ菌)に対する2次除菌療法が2007年8月から保険適用になりました。
クリニックのある多治見市は8月16日に最高気温が40.9℃と日本での最高記録を74年ぶりに更新して有名になってしまいましたが、季節はかわり11月ともなると肌寒い日が多くなってきました。さて、6月の“今月の一言”でピロリ菌の除菌療法のお話をしました。ピロリ菌を有する胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対して、プロトンポンプ阻害剤(制酸剤)+クラリスロマイシン(抗生剤)+アモキシシリン(抗生剤)の組み合わせ(1次除菌)での除菌成功率が低下してきており、耐性菌の増加してきているクラリスロマイシンにかわってメトロニダゾールを加えた2次除菌の保険適用が近づいているという内容でしたが、8月にその2次除菌が保険適用となりました。私のクリニックでも1次除菌を行った方の2割程度が除菌不成功例となり、抗潰瘍剤の服用を続けておりますが、少しずつ2次除菌を開始したところです。2次除菌の成功率は90%程度と高率であることが報告されていますので今後積極的に行っていこうと考えております。2次除菌で用いるメトロニダゾールの副作用は以前とあまり変わらない頻度のようですが、アルコールの作用を増強するため、服用期間中は禁酒が必要ですのでこれからの忘年会のシーズンには気をつけてください。治療数が増加し、治療成績について実感が得られるようになりましたら続報を書かせていただくつもりです。
●平成23年 4月号 【健康診断で胆石があると言われたら】

Q1)それでは、まず、胆石とはどのような病気ですか。
胆石とは肝臓から分泌される消化液の一種である胆汁が石のように固まったものです。胆汁は肝臓で作られたのちに、胆管という管を通って肝臓から、最終的に十二指腸に流れます。この胆管の途中に胆嚢がぶら下がっていて、入ってきた胆汁を濃縮して濃くしたり、食事の刺激で収縮して、効率よく胆汁を十二指腸に送り出す働きをしています。胆嚢の中にできた石を胆嚢結石、胆管の中にできた石を胆管結石と呼びますが、胆管結石は石のある場所により肝内結石と総胆管結石に分かれます。単に胆石と言った場合は、全体の8割を占める胆嚢結石を指す事が多く、また、痛みなどの症状を有する胆石を胆石症と呼びます。
Q2)胆石は大きさや数など様々なものがあるようですが、何か違いがあるのですか。
胆石をすりつぶしてその成分を研究すると、胆石はコレステロール成分が多いコレステロール胆石と、それ以外の成分からなる色素胆石の2つに分けられます。さらに、コレステロール胆石は純コレステロール石や混成石、混合石に、色素胆石はビリルビンカルシウム石や黒色石に細分類されます。それぞれの分類ごとに胆石の形、大きさ、数、色などに特徴を認めますが、胆石の種類によって、症状が違ったり、予後が変わったりする事はほとんどないようです。よく質問されるのですが、経過を見ていて胆石が大きくなったり、数が増えたりすることを、病気が悪くなったのかと心配される方がみえます。お話したように、元々、色々なタイプの胆石があるので、数や大きさなどの石の変化だけでは、その後の治療方針にはほとんど影響しませんので、心配しないように説明しています。
Q3)どうして胆石ができるのでしょうか。
胆石の出来る原因は、胆石の種類によって違います。コレステロール胆石では胆汁中のコレステロール濃度が高すぎることや、胆嚢の収縮機能が低下していることなどが原因と考えられています。ビリルビンカルシウム石では胆汁への細菌の感染によって、胆汁に溶けにくいビリルビンカルシウムが胆汁から析出することが原因と言われています。胆石が出来やすい危険因子として、摂取カロリーの増加や、炭水化物・糖質・動物性脂肪の取りすぎ、運動不足、長時間の絶食などが報告されていますが不明な点も多いようです。
Q4)最近、日本では胆石が増加していると聞いていますが、どうなのでしょう。
日本での胆石は食生活の欧米化や、高齢化により増加してきていると言われていますが、最近10年間は、国内で詳しい疫学調査が行われておらず、直近の正確なデータは分からないようです。
Q5)胆石になるとどんな症状がでますか。
主な症状は腹痛、発熱、黄疸などですが、発熱がある場合、急性胆嚢炎の合併を疑い、黄疸がある場合、総胆管結石の合併を疑います。腹痛は最もよく出現する症状で、脂肪分の多い食事を食べたあとに、みぞおちから右の上腹部にかけておこる激しい発作性の痛みで、右肩や背中にも痛みが走ることがあり、吐いたりすることもあります。この腹痛は、胆石発作や胆道痛、胆道疝痛などとも呼ばれ、特徴的な痛みとされています。しかし、このような症状が全くでない患者も多く存在し、”無症状胆石”と呼ばれています。無症状胆石もずっと症状が無いわけではなく、年に2-4%の頻度で症状のある胆石症に変化しますので、安心はできません。
Q6)胆嚢結石が胆嚢癌の原因になるというのは本当でしょうか。
日本消化器病学会による胆石症診療ガイドラインでは、”胆嚢結石症が胆嚢癌の危険因子となる明らかな証拠はないが、胆嚢癌患者では胆嚢結石の合併が高率であると報告されている。”と述べられています。つまり、胆石が胆嚢癌の原因だと証明は出来ていないが、可能性は否定できないと言うところでしょうか。以前から、胆石保有者と非保有者を比較した研究では、胆石保有者で胆嚢癌の発生が高いとする報告がある一方、胆嚢結石を経過観察しても、胆嚢癌の発生はなかったとの報告もあり、胆嚢癌と胆石に関しては、まだ、はっきりとした結論は出ていないようです。
Q7)それでは、胆石を診断するための検査について教えてください。
? まず、腹痛や発熱、黄疸などの症状について、以前からの詳細な病歴の聞き取りを行ないます。その後、診察を行い、次に、肝機能、炎症反応、腫瘍マーカーな どの血液検査を行います。血液検査で肝機能異常がある場合、総胆管結石合併を見つけるきっかけになる事があります。続いて画像診断を行いますが、最初に行 うのはもちろん腹部エコーです。腹部エコーでは、ほとんどの胆嚢結石と一部の胆管結石の診断が可能です。胆石の大きさ、数などの情報が得られる他、胆嚢の 壁が厚くなっていないかや、癌やポリープが合併していないかなど様々な情報が得られ、胆石を診断する上で最も重要な検査法と言えます。腹部単純X線検査も 行いますが、胆石の石灰化の有無が確認できます。その他、CTやMRI、排泄性胆道造影などの検査法があり、それぞれ有用な検査ですが、それらを組み合わ せたり、応用したりした精密検査も日々進歩してきています。これらの検査は全て外来で行うことができ、手術を行う事になっても、以前のような術前の入院検 査は現在では必要なくなりました。
Q8)胆嚢結石の治療法について教えてください。
 症状のある胆嚢結石症に対する治療の原則は、胆嚢摘出術という胆石と胆嚢を取り除く手術を行います。昔はおなかを大きく切る開腹胆嚢摘出術が行われてい ましたが、最近はおなかに小さな穴を開けて腹腔鏡というカメラでおなかの中を見ながら胆嚢を取り除く、腹腔鏡下胆嚢摘出術が一般的に行われています。入院 期間も1週間以内と僅かで、痛みも少ないため第一選択の手術法として普及しています。手術以外の治療として、胆石が石灰化のない小さな石で、胆嚢の働きが 保たれていれば、薬を使った経口胆石溶解療法や、体外衝撃波結石破砕療法が行われる場合があります。しかし、それらの治療法では治療効果に限界があり胆石 消失の成功率はけっして高くはありませんし、胆嚢が残るため長期的には胆石再発の可能性もあります。
Q9)最後に、人間ドックや健康診断で胆石があると言われた場合に、どうすればいいのか、まとめていただけますか。
 突然、検査で胆石があると言われた場合、まず、強い痛みがでるかもしれないとか、手術が必要になるかもしれないとか、連想して怖くなることが多いと思い ますが、ここまででお話ししたように、必ずしも全員に症状がでるわけではありませんし、また、手術以外の治療法も色々あるわけです。まず、専門医に相談す る事をお勧めします。本やインターネットを使えば、一般的な胆石の診断・治療などを知る事ができますが、個々の状態に合わせた今後の治療方針を立てること は、意外に難しい場合が多いので、専門家の意見は大変参考になります。また、胆石は化膿性胆管炎などの命に関わる重篤な合併症を引き起こす場合もあります ので、たかが“石”と侮ってはいけません。

 さて、健康診断で発見された胆石の場合、症状のない無症状胆石であることが多いと思います。腹部エコーを用いて、胆嚢の壁の状態が詳細に観察できる場合 には、胆嚢癌を合併しないか注意深く検査しながら経過観察を行うことができます。経過観察を行う場合、今後腹痛などの症状が出現する危険性は年に2-4% あり、それを事前に予測することは困難であること、症状が出てからでも、手術は安全に施行できますが、腹腔鏡下胆嚢摘出術がやりにくくなる場合があること をデメリットとして話しておく必要があります。十分説明をうけたあとで、将来の危険性を回避するため手術を希望された場合や、胆嚢の壁に異常を認めるか、 または、胆嚢の壁の状態が十分観察出来ない場合には腹腔鏡下胆嚢摘出術を行います。もちろん、お薬を使った経口胆石溶解療法を希望された場合は、色々な条 件を検討したうえで、可能かどうか決定します。いずれにしても、検診で発見された胆石は症状が無い事が多いため、多くの場合、特別な治療を行わず、経過観 察が可能です。本人の希望も治療法選択には大きな要素となります。専門医から十分説明を受けたうえで、自分が納得出来る最良の治療法を選択する事が重要と なるでしょう。

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